モロッコは、日本同様四季のある国なので、基本的にはどのシーズンにご旅行されても、その季節に合った楽しみ方ができる観光地です。
過ごしやすさで言えば、やはり春と秋がベストシーズンとはいえますが、夏も冬ももちろんご旅行いただけます。
皆様の休日に合わせてご旅行時期を決めていただく、ということで基本的には問題ないのですが、、、
気をつけなければいけないのが、モロッコはイスラム教国ですので、宗教行事があるということ。
今回はヒジュラ暦(イスラム暦)における特別な「聖なる月」ラマダンについて、わかりやすくご説明いたします。
ご旅行者にとっては、なかなか不便なことも多いラマダン月ですので、できれば避けたい時期ではありますが、
イスラム教という宗教に強く興味を持たれている方は、敢えてこの時期を選ぶこともありますので、まずはしっかりラマダンについて理解しておくことが大切ですね。
もくじ
そもそもラマダンってなに?
ラマダンは、ヒジュラ暦(イスラム暦)での第9月のこと。
イスラム教徒は、この月の日の出から日没までの間に、ムスリムの義務のひとつ「断食(サウム)」として、飲食を絶つことが行われます。
『ラマダン=断食』と誤って捉える人も少なくありませんが、ラマダンとは、あくまでもヒジュラ暦における月の名です。
この月において、ムスリムは日の出から日没にかけて、一切の飲食を断つことにより、空腹や自己犠牲を経験し、飢えた人や平等への共感を育むことを重視する。また親族や友人らと共に苦しい体験を分かち合うことで、ムスリム同士の連帯感は強まり、多くの寄付(ザカート)や施し(イフタール)が行われる
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断食中は、飲食を断つだけではなく、喧嘩や悪口や闘争などの忌避されるべきことや、喫煙や性交渉などの欲も断つことにより、自身を清めてイスラム教の信仰心を強める。
断食といっても、この約1ヶ月の間を完全に絶食するわけではなく、日没から日の出までの間に、1日分の食事を摂ります。
日没のころ1日の最初に摂る食事はフトール(朝食)と呼ばれ、栄養いっぱいのナツメヤシや体に優しいスープなどからいただきます。
また旅行者や重労働者、妊婦の方、産後間もない方、授乳中、生理中、病人、子ども、高齢者などやむ得ない事情のある方には断食が免除されており、
必ずしもやらなければいけないものではありません。(ただし旅行者や重労働者、生理中の方などは、後に休んだ期間をやり直さなければなりません)
2022年のラマダンはいつ?
2022年のラマダンは、4月3日(日)~5月2日(月)と予想されています。
昨年2021年のラマダンは日本のゴールデンウイークと重複してましたが、今年は何とかゴールデンウィーク前に終了しそうです。
ヒジュラ暦であるため、三日月状の細い月が目視により観測されたことにより決定されるので、日時に関しては現段階では予想となります。
またヒジュラ暦は1年ごとに11日ほど早まりますので、およそ33年で季節が一巡します。そのため「ムスリムは、同じ季節のラマダンを人生で2度経験する」と言われているようです。
私が始めてラマダンを経験したときは9月でした。う~ん、だいぶ移動してきてますね。いちばん過酷な夏のラマダンは今後20年ほどはナイということですね!
ラマダンによる町や人々への影響は?
ラマダン期間に入ると、人々の生活スタイルに大きな変化があります。
日常とどんなことが変わってくるのか?
ご旅行者にとって不便なこともありますので、しっかり確認していきましょう。
飲食店や商店、銀行などの営業時間
新市街などの観光客があまり来ないエリアにある飲食店は、日中はほとんどのお店は閉めており、日没後(フトールのあと)に開きます。
旧市街(メディナ)などの観光客が集まるエリアにある観光客向けの飲食店は、営業時間を変更してオープンしています。
朝は少し遅めの開店→フトール時間の1~2時間前に一旦クローズ→お店によってはフトール後に再び開店する。
中には一旦閉めることはせず、フトールを提供しているお店もあります。
ショッピングセンターなども同様で上記と同じような営業時間です。
銀行や郵便局、電話会社などの窓口は15時ころには閉まってしまいます。
またこちらの朝の開店時間も通常より1時間ほど遅れます。
2022年のフトールは大体18:40ころから19:00ころになります。1日あるいは2日あたりに1分変わってきますので、初日と最終日では約20分の差が出てきます。
タイムゾーンが変わります
もともとモロッコのタイムゾーンは、西ヨーロッパ時間でUTC+00:00でした。
*日本との時差が9時間です。(日本時間マイナス9時間がモロッコ時間)
そして、3月末から10月末までサマータイムを導入し、1時間早めることにより、この期間のみ日本との時差が8時間となっていました。
なのですが、、、
2018年から通年サマータイムとなることが発表され、モロッコの通常時のタイムゾーンが中央ヨーロッパ時間(UTC+01:00)になりました。
現在は日本との時差は8時間です。
ただし!
ラマダン期間中は特別に元の西ヨーロッパ時間(UTC+00:00)に戻されますので、ラマダン期間中の日本との時差は9時間になります。
日曜日を変更基準にしてますので、厳密には以下の期間に日本との時差が9時間になります。
2022年3月27日(日)3時0分~
2022年5月8日(日)2時0分まで
アルコール販売の禁止
イスラム教国ではありますが、モロッコではお酒は飲めますし、買うこともできます。
もちろんモロッコ人でも飲む人がたくさんいます。
ですが『神聖な月』であるこのラマダン期間は、アルコールの販売を禁止しています。
普段は外資系のスーパーマーケット(カルフールなど)でお酒を購入することができますが、ラマダンに入る5日前あたりからクローズとなります。
ホテルなどで在庫があれば提供してくれる可能性もありますが、あまり期待はできないです。
イスラムの国では珍しくモロッコではビールとワインを生産しています。とても飲みやすいので、ラマダンにかからないご旅行では是非試してみてくださいね!
ラマダン期間中のご旅行【注意点】
服装への配慮
イスラム教徒の女性は、髪(国によっては顔も)と肌を隠しているイメージを持たれている方が多いと思いますが、モロッコ(都市部に住んでいる人)ではそんなことはなく、若い女性は頭にスカーフを巻くこともなく、夏はteeシャツにジーンズやスカート、ショートパンツを履く人もいます。
中にはタンクトップやキャミソールで出歩いて人もときどき見かけます。
ですが、
ラマダンという神聖な時期に関しては、イスラムの教えに倣って、肌の露出は抑えます。
非ムスリムへの強制はありませんが、この期間に関しては非ムスリムでも極端な肌の露出は控えた方が良さそうです。かといって、ムスリム女性のように完全に隠す必要もありません。
teeシャツに少なくとも膝が隠れる程度のズボン(男性も)であれば問題ありません。
ちなみに欧米人はまったく気にせず、キャミソールにミニスカートで町歩きをしている女性は結構見かけます(苦笑)
公共の場での飲食・喫煙などの配慮
日中、都市部でもカフェやレストランは閉まっているところが多いですが、
星付きホテルや一部外国人向けのレストランは時間の短縮や変更などの対応で営業しております。
非ムスリムや旅行者には断食は強制していませんので、遠慮なくお食事をしていただいて問題ありませんが、断食をしているムスリムへは冗談でも飲食をすすめたりなどは絶対にお避けください。
また日中、モロッコ人が多く集まる場所などで堂々とタバコを吸ったり、お水を飲んだりする行為はできるだけ避けたいですね。
どうしてもというときは、背中を向けたりなどの配慮はしましょう。
交通事故に注意
年間を通してラマダンは交通事故が急激に増える時期です。
空腹からくる苛立ちなどで運転は荒くなったり、判断能力が欠けたりします。
日没数時間前は、みな仕事を終え家路を急ぎますので特に交通事故が発生しやすくなります。
交通事故に巻き込まれないよう、日没に近い時間帯ではできるだけタクシー利用は避けたほうが無難です。
電車やバス、タクシーは通常通り運行していますが、タクシーはフトールの前後1時間くらいはかなり減ってしまい、拾いづらくなります。
フトール時間前後1時間は出歩かない
もともとスリや引ったくりなどの軽犯罪が多いモロッコですが、ラマダンの間は一時的に強盗が増える傾向にあるようです。
これは断食による抑圧などの精神的な理由が影響しているとはいわれていますが、、、
特にフトールの時間が迫ると皆帰宅しますので、町から人が消えます。
この時間帯に出歩いているのは観光客のみですので、このフトール前後のひと気のない時間帯を狙った強盗が多く発生します。
できるだけこの時間帯はリアドやカフェで過ごすことをおすすめいたします。
集合時間に注意!
上でもご紹介しましたが、ラマダンの間はモロッコではタイムゾーンが変わります。
*通常時:UTC+0 → ラマダン:UTC+1
バスや電車の出発時刻、ツアーにご参加されている方は集合時間に注意が必要です。
この時期は電車やバス、飛行機に乗り遅れてしまう方が時々おります。
特に飛行機に乗り遅れたら大変ですので、搭乗数日前にはインターネットなどで時間の変更がないか、必ず確認しましょう。
ラマダン期間中のご旅行【楽しみ方】
ラマダンの間にモロッコ旅行をされる方は、どうせならこの特別なラマダンを楽しみましょう!
不便なことはもちろんありますが、ムスリムがどんな風にラマダンを過ごしているのか?
ムスリムの生活を垣間見ることができる貴重な時期でもあります。
現地の言葉を使ってお祝いの挨拶をしてみよう!
断食をするとはいえ、ラマダンは『お祝い』です。
日中こそ飲食はしませんが、日没後は人々は家族や親戚、友人を招いて毎晩のようにミントティーとパティスリーで深夜までおしゃべりしています。
貧しい人や初めて会った人でも無料でフトールを提供したり、招待したり、、、
みんなでラマダンを祝福し、時間を共有しています。
現地でモロッコ人と話しをする機会があったら是非「ラマダン ムバラク!(ラマダンおめでとう!)」と声をかけて挨拶してみてください。
断食に挑戦!フトールを食べてみよう!
非ムスリムは断食をする必要はありませんし、ムスリムの人たちも決して強制はしません。
ただせっかくの機会なので、この時期にご旅行される方は、1日だけでも挑戦してみてはいかがでしょうか?
自分ひとりではなかなか出来ない断食も、みんながやっていると思うと、不思議とできるものです。断食をしているとモロッコ人もわかればきっと喜んでくれると思いますよ。
基本的にはフトールは家族揃っていただきますが、友人・知人を自宅のフトールに招待したり、されたりがよくあります。
ご旅行者でもモロッコ人に誘われたりすることもあるかもしれません。その際は是非参加してみてください。日没のアザーンとともに、世界中のムスリムが一斉に食事を開始するという不思議な感覚を味わえるはずです。(実際には時差がありますので、同時という意味ではありません)
中には金銭を要求したり、スリなどを目的として声をかけてくるモロッコ人もいますので、しっかり相手を見極めて安心が確認できたところで参加してくださいね。
モロッコにおける定番のフトールはこんな感じです。
オレンジジュース、ハリラ、ゆで卵、デーツ、チュバキア、ハルシャ、ミラウィ、バグリール、ブリワット、、、
マラケシュは観光客が極端に多いので、町のあちこちでフトールを提供しているカフェやレストランがたくさんあります。
是非モロッコ流のフトールをお楽しみください。
日没後に街を散策してみよう!
普段であれば日没後の町歩きはあまりおすすめしませんが、このラマダンの間は特別です。
モロッコでは通常、時計の針を基準にしているのでなく、お祈りの時間を中心に動いています。
マグリブ(日没)のお祈りになると暗くなるので、女性や子どもたちはそのころに帰宅するといった感じですね。
ですが、ラマダンはフトール後に町が賑わい始めますので、普段は夜には出歩かない女性や子どもたちも深夜近くまで外での時間を楽しみます。
日常とは違う町の雰囲気を是非お楽しみください。
そして、もうひとつ是非観ていただきたいのが、モスクでのお祈り。
ラマダンは普段以上に人が集まり、団体でお祈りをします。
5回のお祈りのうち、イシャーのお祈り(1日の最後のお祈り)は特に人が集まり、ほとんどのモスクでは中に入りきれず、外まで溢れてお祈りをしているんです。
通常は中でお祈りをしている様子は見ることができませんが、このときだけは外に大勢の人々が溢れ出てお祈りをしているので見れるんです。
日本では決して見ることのできない貴重な団体でのお祈り。
とても感動しますよ。
冬のラマダンは日没(フトール)の時間が早くなるので、また違ったスタイルになると思います。私自身、冬のラマダンは未体験ですので、その様子は数年後にレポートします!
ラノーリアトラベルのツアー催行状況
ラノーリアトラベルではラマダンも通常通りツアーを催行しております。
ラマダンでも個人であちらこちらへと行かれる方も中にはおりますが、不便なことも多く、出発前より現地では想像以降に不安が大きくなると思います。
不安を抱えてのご旅行は行動範囲も自然と狭くなりますので、まずはツアーにご参加されて安心してご旅行することが大切です。
飲み物や食べ物に困らないよう、弊社スタッフが完全サポートいたします!
安心してお越しください。
出発時刻は朝9時とさせてください。(フライトが控えている日はこの限りではありません。)17時ころには目的地に到着できるよう目指しておりますが、万が一フトールの時間に移動中であった場合には、30分程度で構わないので、ドライバーの食事の時間を与えてください。
ラノーリアトラベルと同系列カフェラノーリアはラマダン中もオープンしています!
是非遊びにいらしてください。
わたしはいつもお店にいるわけではありませんので、あらかじめ声をかけてくだされば、是非ご挨拶させていただきます。
まとめ
ラマダンについて、なんとなくでもご理解いただけたでしょうか?
このようにラマダンの間は注意点や不便なことがたくさんありますが、ムスリムの宗教に対する姿勢や生活を垣間見ることができる大変貴重な時期でもあります。
普段裕福な環境にある者、貧困な生活を送っている者に関わらず、同じ空腹を体験し苦しみを分かち合いながら、食べ物のありがたさや恵まれた環境への感謝の気持ちを再確認できる素晴らしい期間です。
そんなラマダンをどんな風に過ごしているのか?
???がいっぱいで、イスラム教にご興味のある方は、この時期のご旅行もおすすめです。
逆にごく日常のモロッコを見たい方や、買い物、美味しいモロッコ料理を堪能したい方、勉強したい方にはラマダンは不向きな時期です。
ラマダンは神聖な月であり、イスラム教徒にとってとても大切な時期です。
中にはかなりストイックになる人もいますので、常に配慮の気持ちが大切で重要になってきます。
ほんの少しの心遣いで現地の人たちと一気に距離が縮まり、より素晴らしい体験となるかもしれませんね。
主にイスラム教社会で使われている暦法。イスラム暦とも呼ばれます。太陰暦、すなわち月の満ち欠けのみを元にした暦であるため、1年ごとに約11日ほど期間が早まります。